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紅子さんの部屋は壁紙が紫色で、家具は全て黒。
何だかいい匂い。
そして壁一面本棚があって本がぎっしりと並んでいた。
全て心理学や医学書などだった。
『紅子さんて………』
『ふふふ、こう見えて元医者なの。精神科医。』
お花の匂いのするお茶をテーブルに置いた。
『昔、善の精神鑑定したこともあるの。
それ以降は一応主治医。
まぁ、もう医者辞めちゃったけどね。』
『精神鑑定って……事件とかでやるやつですか?』
『そう。善のお母さん、シングルマザーなんだけど。
精神を病んじゃっててね。善が17歳の時、善の目の前で焼身自殺をしようとしてね。』
『焼身自殺……』
『一命はとりとめたんだけど、善は助けるわけでもなく、ただ見てただけ。ちょっと普通じゃないでしょ?
それで精神鑑定したの。』
紅子さんは話の内容のわりに、生き生きと話す。
『なつめちゃん、精神病質って分かる?』
『分かりません』
『反社会的人格の一種。
サイコパスって聞いたことある?
善はまさにそれ。』
紅子さんは煙草に火をつけると、本棚から本を一冊取り
精神病質の定義を見せてくれた。
良心の異常な欠如
他者に冷淡で共感しない
慢性的に平然と嘘をつく
行動に対する責任が全く取れない
罪悪感が皆無
自尊心が過大で自己中心的
口が達者で表面は魅力的
『当てはまるでしょ?』
『分かりません。善は優しい時もあります。』
本を閉じた。
『精神病質者は基本的には他者に好意を持ったりしないわ。持つとしたら所有物への執着心。』
所有物………
『善と居たって良いこと無いわよ?
善のお母さんみたいに壊れて終わり。』
ふぅと煙を吐いてこっちを見た。
『それならそれで、別に良いです。』
『ふふふ。やっぱりなつめちゃんて面白い。』
煙草を灰皿に押し付けると、じっと顔をのぞきこんできた。
『今度はなつめちゃんの事、教えて?』
テスト勉強どころじゃなくなってしまった。
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