奇妙な男

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ああ、朝から最悪。 満員ではないけどそこそこ混んでる電車。 後ろのエロ親父………… さっきからしつこくお尻を撫で回す。 咳払いをしてじろりと後ろを向くと、新聞で顔を隠した。 次触ってきたら腕を捻り挙げて………… 指をポキポキならしてスタンバイしてると 『おじさん、いい加減にしましょうか。』 後ろを振り返ると 見知らぬスーツの男がエロ親父の腕を掴んでニヤリと笑っていた。 『な、なんだ君は!』 エロ親父は顔を真っ赤にして反論してきた。 車内の視線が一気に私達に集中する。 『まぁまぁ、騒がないでください。 とりあえず次降りましょう。』 スーツの男はそう言うと、録画中のスマホをエロ親父に見せた。 『な!………………………チッ。』 何がチッだ。 次の駅に着くと、車内の人はさっと出口付近を開けた。 『おいで。』 スーツの男は片手はエロ親父の腕を掴み もう片方の手を私に差しのべてきた。 電車を降りると駅員に声をかけるわけでもなく ホームの端まで引っ張られた。 『さて。』 スーツの男はくるりと振り向くと、私の手だけ離した。 『憐れなおじさんに選択肢を与えましょう。 このまま駅員につきだされて全てを失うか…』 男はエロ親父のネクタイを引っ張り 引き寄せると何かを耳打ちした。 『チッ』 エロ親父はおもむろに自らの鞄から財布を取り出し 四万円を男に突きつけた。 『お利口さんですね。』 男は満足そうにお金を受け取った。 『お前らグルか?美人局か?』 エロ親父は悔しそうに怒鳴る。 『はは、面白いことを言いますね。 それより会社、遅れますよ?』 ホームの電工掲示板を指差しながら愉快そうに言った。 エロ親父は悔しそうに何度も振り返りながら次の電車に消えた。 『あの………』 『さて、これは君の取り分です。』 スーツの男は二万円を差し出した。 『要りません。』 『なぜ?』 『なぜって!これじゃ恐喝じゃないですか?』 『慈善事業ですよ』 男は不敵に笑っている。
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