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   3 「ホゴセキニンシャイキチシ罪及びシタイイキ罪の疑いで、少しお話、伺えますか?」  家に押しかけてきた二人組の警察官のうちの片方が、哲さんに告げた。その、僕にとってはほぼ外国語としか思えない名前の罪に、なぜ哲さんが問われることになったのか。  泰介さんの様子がおかしいことは、僕もすぐに気が付いた。僕が高校に上がってすぐの春だった。  痩せたな。まず初めにそう思った。僕の勉強を見てくれている時に、変な咳をすることが多くなった。それを哲さんに言ったら、「肺ガンが再発したんだ」と哲さんはあっさり僕に言った。  泰介さんは僕がここへ来る前に肺ガンが見つかり、一度手術をしたことがあるのだそうだ。 「泰介さんは、もし再発した時には、できるだけ長く家に居たいって前から言っていたから。入院は考えていないよ、僕も泰介さん自身もね」  哲さんのその言い方で、僕は泰介さんのガンがもはや治療の余地がないレベルまで進行していることがわかった。 「・・・あとどれくらいなの?」 と僕が絞り出すように尋ねると、 「余命はあと三ヶ月って医者に言われてる」 とまた哲さんは淡々とした口調で答えた。  介護用ベッドを家に手配し、訪問看護師を毎日2回呼ぶことになった。また在宅医療専門の医師である用賀先生が、週に一度訪問診療に来てくれることになった。  今まで普通に家の中を歩いて、自分でお風呂に入り、ご飯を食べていた泰介さんが、ベッドの上でほぼ寝たきりになった。病状は急激に進行していった。ご飯を食べるのに、箸が自力で持てなくなった。排泄も自力では難しくなり、おむつをするようになった。僕も泰介さんのおむつを取り替えるのを手伝った。でもほとんどおむつも汚れていないことが多くなっていく。  大柄で体格のいい泰介さんの手足が枯枝のように細く、萎びていく。僕は怖くなった。何もできない自分に苛々した。幸せに暮らす周囲の他人が恨めしくなった。何が泰介さんをこんな風にしていくのか。これが死ぬということなのか。 「泰介さん?」
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