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大切な人との抱擁――所謂『ハグ』という行為には、多くの効果があるらしい。
たとえば、気持ちが落ち着いたり、幸せな気分を味わったり。個人差はあるが、ストレスの解消にもなるようだ。たった数秒のハグでも、それらの効果を得られるという。
信じがたいことかもしれないが、僕はこれを身をもって体感している。正直認めたくはない気はするが、それなりに幸福感を感じているのだから認めざるを得ない。人に抱きしめられるというのは、妙に落ち着くものだった。
ただ、僕にハグをしてくる相手に少々問題があるのだ。相手の性格に難があるのも確かだが、一番の問題はハグの仕方である。
……ほら、今日もやってきた。
背後に近づく軽快な足音。その僅か三秒後のことだ。
背中にかなり勢いの強い衝撃。そのまま倒れないように僕は踏ん張る。
「おっはよぉ、凛くん」
「……おはよ、真白」
いつものように抱き着いてきた真白が、僕の腹部に手を回しながらのんびりとした声音で挨拶をしてきた。彼女が僕を抱きしめた瞬間、背中に優しい温もりが宿る。ついでに、ふわりといい香りもした。
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