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「……またお得意の嘘でしょ」
呆れつつ、そう返した。クラス一の虚言癖の持ち主である彼女のことだ、またそうやって僕を期待させるような嘘を吐いたに違いない。
この魔法に似た呪いの言葉は、幾度となく僕の心をかき乱し、苦しめてきた。これが本当だったら、どんなに良かったことか。もういっそ、こんな片思いなんか冬と一緒に眠りについてくれればいいのに。
「えへっ、バレちゃったかぁ~」
背後から落胆したような、それでいて何故か明るい声音が返ってきた。
「今日こそは本気かと思った?」
「少しだけね」
「残念!私は凛くんのこと好きじゃないんだよねぇ!」
彼女の腕が離れたから、僕は振り返る。そこには、悪びれる様子もなく眩しい笑顔を浮かべた真白が居た。その言葉こそ彼女お得意の嘘かもしれないのに、僕の心はナイフで切り付けられたかのように傷ついた。心が波打ったかのように落ち着かない。嘘だと自分で分かっているのに、無意識で傷ついている自分に腹が立った。
「……僕も、真白のことなんか好きじゃないよ」
だから、こんな心にも思っていないことを口にしてしまった。照れ隠しなのか、はたまた彼女に対してのちょっとした仕返しなのか。その言葉は、自分で言ったことなのに、全て僕に跳ね返ってきて突き刺さるような気がした。
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