ホワイト・ライアー

4/11
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「……またお得意の嘘でしょ」  呆れつつ、そう返した。クラス一の虚言癖の持ち主である彼女のことだ、またそうやって僕を期待させるような嘘を吐いたに違いない。  この魔法に似た呪いの言葉は、幾度となく僕の心をかき乱し、苦しめてきた。これが本当だったら、どんなに良かったことか。もういっそ、こんな片思いなんか冬と一緒に眠りについてくれればいいのに。 「えへっ、バレちゃったかぁ~」  背後から落胆したような、それでいて何故か明るい声音が返ってきた。 「今日こそは本気かと思った?」 「少しだけね」 「残念!私は凛くんのこと好きじゃないんだよねぇ!」  彼女の腕が離れたから、僕は振り返る。そこには、悪びれる様子もなく眩しい笑顔を浮かべた真白が居た。その言葉こそ彼女お得意の嘘かもしれないのに、僕の心はナイフで切り付けられたかのように傷ついた。心が波打ったかのように落ち着かない。嘘だと自分で分かっているのに、無意識で傷ついている自分に腹が立った。 「……僕も、真白のことなんか好きじゃないよ」  だから、こんな心にも思っていないことを口にしてしまった。照れ隠しなのか、はたまた彼女に対してのちょっとした仕返しなのか。その言葉は、自分で言ったことなのに、全て僕に跳ね返ってきて突き刺さるような気がした。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!