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「……いつもの嘘でしょって言うだろうね」
僕はぶっきらぼうに答えた。
「あははっ!やっぱりそうだよねぇ。でも安心してよ、きっと好きだなんて言うことはないだろうからさ」
妙に上擦った声だった。どうして僕のことが嫌いなのに、そんな反応をするのだろう。そんなんだから、半端に期待してしまうのだ。嘘つきな彼女の本心なんて、天地がひっくり返ろうとも理解できやしない。
真白はにこりと貼り付けたような笑顔を浮かべると、大股で僕の横を通り過ぎていった。彼女はただ昇降口へ向かっただけなのに、何故だか無性に不安感に駆られた。真白が行く先が、とても遠い世界に見えたのだ。
気が付けば僕は、真白の腕を掴んでいた。頭で考えるよりも早く、彼女を引き留める。振り返った真白は、不思議そうに目を丸くした後、涼しい笑みを湛えた。
「なに?凛くん」
「えっと……」
理由もなく引き留めてしまったから、咄嗟に言葉が出てこなかった。何を思ったのか、思考回路がバグった僕はとんでもないことを口にする。
「……たまには、僕から抱きしめてもいいかな?」
しん、と粉雪が舞う校庭が静まりかえる。まだ朝早いせいか僕ら以外誰もいないこの場所は、ひどく虚しかった。
「えっ、急にどうしたの?どういう風の吹き回し~?」
「……ダメかな」
珍しく慌てた表情の彼女に近づく。いつだって涼しい顔で全てをのらりくらりとかわす真白らしくない。
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