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「……し、仕方ないなぁ!素直に言った凛くんに免じて許可してあげよう!」
真白が調子はずれに言った瞬間、僕は彼女を抱きしめた。まるで壊れ物でも扱うかのように。直接流れ込んでくる温もりがどうしようもなく愛おしくて、ひどく苦しい。
抱きしめる時間が経つにつれて、僕は幸福感で満たされていく。深い深い海に溺れていくような感覚だった。秘めたこの思いも、いっそ一緒に溺れてしまえばいいのに。
偉そうなことを言っておきながらも、彼女は僕の背にしっかり手を回していた。少しだけ自惚れそうになるが、芽生えた期待を慌てて振り払う。これは叶わない恋なんだ。もうそれは、一番僕が知っている。
でも、彼女みたいに口に出さなければ何も伝わらない。今からでも、遅くはないだろうか。
……あぁ、真白から伝わる体温がやっぱり苦しい。
「ねぇ凛くん。一つだけ聞いてほしいことがあるんだけど」
「……奇遇だね。僕も聞いてほしいことがあるんだ」
顔をあげた真白が、目元に優しい雰囲気を滲ませた。
「じゃあ、先に言ってよ!私は後でいいからさ」
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