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高山が微笑みながら大きく首を振った。
「夏実君。和明君は視力を取り戻せると思う。角膜移植で取り出した君の角膜を検査した所、君の角膜に潰瘍を生んでいた原因は新種のバクテリアだった。そのバクテリアを除去して、君の角膜の損傷部分を培養・再生させている。あと一週間も経てば、君の角膜を和明君に再移植が可能となるだろう・・」
私は両手で顔を覆って泣き崩れた。
そして、私と和明に起こった奇跡に感謝した。
私は和明の角膜を使ってあの白い世界から戻る事が出来た。
そして、和明は私の角膜を使って白い世界を後にする事が出来る。
お互いがお互いを助け合う、お互いの身体の一部を補い合うなんて何て素敵だろう。
脳の停止時間を考えると和明が完全に元の生活を取り戻せるかは分からない。
しかし私は決めていた。一生、和明の側に居る事を。
それがどんなに苦しい人生になっても、二人なら乗り越えられると私は信じていた。
あの絶望的な白い世界から戻って来れた二人なら・・
FIN
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