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次の日の朝、私は目を覚ました。
しかし、目を開けても白い世界が広がっているだけだった。
電灯の光は感じられる。
しかし全ての視界は白いベールに完全に包まれ、昨日の白濁した先に見える景色も完全に失われていた。
私は母に連れられ東京医科大学の眼科に行った。
そこで受けた診断は・・
「角膜潰瘍ですか・・」
私は呟いた。
「そうです。しかし夏実さんのケースは非常に稀なケースです。通常の角膜潰瘍は角膜上皮からゆっくり進むのですが、夏実さんの潰瘍は既に三層目の角膜実質だけで無く五層目の角膜内皮まで進んでいます。且つ両目が同時にと言うのは前例がありません」
高山と言う名のその医師は淡々と説明した。
「先生、それでどうやって治療をするのですか?」
母がそう聞いた。
高山は首を振った。
「ここまで進行した角膜潰瘍は薬物では治癒出来ません。唯一の治療方法は角膜移植ですが、現在、ドナーが不足しており、四年程の順番待ちになります」
母が隣で号泣している。
私は目の前に広がる白い世界を見ながら(和明に何て言おう・・)という事ばかり考えていた。
これで私が彼と結婚してアメリカに一緒に行くという事は不可能になった。
彼を私の病気で縛る訳には行かない。
彼にはAI技術者としての素晴らしい未来が待っているのだから・・
私は頬に流れる涙を感じていた。
私も母の横で泣き続けた。
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