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私が目を覚ますとベットの上だった。
やはり私の周りには白い世界が広がっていた。
頭にはグルグルに包帯が巻かれている。
「夏実、気付いたかい?」
和明の声がする。
「和明、私、どうしたの?」
声のする方を向いて私は言った。
「君はカフェから飛び出して、車道に倒れて、僕と一緒に車に跳ね飛ばされたんだ。幸い、頭を打撲しただけで、大きな外傷は無いけど・・」
私は思い出した。あの時、大きな身体が私を守ってくれた。あれは和明だったんだ。それで一緒に跳ねられて・・
「和明は大丈夫なの? 私を守ってくれたんでしょう?」
私は心配になって彼に聞いた。
「大丈夫、ピンピンしてるから。心配しないで」
「そう、良かった。ゴメンね。私の所為で、事故に巻き込まれて・・」
「いいさ、僕も夏実を守れて良かった。それより、もっと凄いニュースがあるんだけど・・」
和明は嬉しそうに、そう言った。
「えっ? 何?」
私は少し警戒しながら聞いた。
「実は君のドナーが見つかって、事故で君が意識を失っている間に角膜移植の手術が行われたんだ」
「えっ?」
「明日には君の目の包帯が取れるから、君は元の視界を取り戻す事が出来るって」
「えっ? それって本当?」
「本当だよ。嘘をつく必要が無いだろう。だから、君は僕との結婚も出来るし、一緒にアメリカにも行ける筈さ」
その和明の説明は、一度失った私の人生を取り戻す、素晴らしいニュースだった。
「和明、ありがとう。とても嬉しい。これは奇跡ね。ドナーとして私に角膜をくれた人にお礼を言わなくちゃ・・」
和明も本当に嬉しそうだった。
彼は、自分がシリコンバレーでやる人工知能の技術開発について、面白おかしく説明してくれた。
彼は本当にアメリカに行きたかったんだ。そして絶対に行くべきだったんだ。
私の所為で彼が夢を失わなくて本当に良かった・・
私は心からそう思った。
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