白い世界

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翌日、私は病院のベッドで目を覚ました。 今日で、私の前に広がる白い世界ともお別れだ。 そして私は和明と新しい未来を掴み取るんだ。 今日も和明はやって来てくれた。 「夏実、先生が来たよ。これで眼が見える様になるぞ・・」 和明がそう言うと、高山先生の声が聞こえた。 「夏実さん、お母さん、お早うございます。それでは包帯を取りますね」 私は高山先生のその声に、少し違和感を感じた。 (ここに居るのは、母では無くて、和明だけど・・) 高山先生が私の包帯を外していく。 「さあ、夏実さん。ゆっくり眼を開けてみて下さい」 私は未だ視界に広がる白い世界に少し不安を感じながら、ゆっくり眼を開けて行った。 その瞬間、白い世界の一部が上下に割れて様々なカラーが溢れて来た。 そして割れたカラー部分が徐々に大きくなり、完全に白い世界が消失した。 乱雑なカラーだった景色が徐々に実体を持った形状になっていく。 目の前に二人の顔が見える。 高山先生とそして・・ 「お母さん・・?」 母は手にタブレットを持って、私を見ていた。 眼から大粒の涙を流している。 「見えますか?」 高山先生が言った。 「はい、見えます。お母さん、さっき和明が居たでしょう? 何処に行ったの?」 その時、和明の声が聞こえた。 「夏実、僕はここだよ?」 その声はタブレットから聴こえてきた。 ああ、そうかと私は思った。 「今日は和明が来ていないから、スカイプかラインで話していたのね? もう、ビックリさせないでよ!」 私のその声を聞いて母が号泣した。 (えっ? 何?) 私は母の涙の意味が分からなかった。
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