白い世界

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「夏実、ごめん。僕の本体は、もうこの世には居ない。これは僕の作ったAIが、君の声を認識して、僕の声を合成して話していた。君との話を機械学習させているから、多分、違和感無く話せていたと思う」 「えっ? 何? 居ないって、どう言う事?」 「僕はあの事故で君を守って死んだ。瀕死の重症で病院に運ばれた僕は、死ぬ間際に僕の角膜を君に移植する様にお願いしたんだ。そして君のお母さんに僕のタブレットを自宅から持って来て貰って、開発していた僕の言語AIを起動させて、君と話させる様にお願いした。君に無用な心配をさせない様に・・」 「えっ? 嘘・・ そんな・・」 私の目には大粒の涙が溢れていた。 「僕の角膜で君の眼が治る事を本当に願っていた。それだけは実現出来て本当に嬉しい。君には幸せになって欲しい・・」 私はその場で号泣した。 泣いて泣いて涙が枯れ果てた時に、母が言った。 「夏実、和明君に会いに行きましょう」 「えっ? だって・・」 母は私の手を握ってベッドから強引立たせた。 「いいから、こっち」 母はそう言うと、私の手を引っ張って歩いて行く。 多分、霊安室に行くんだろうなと思っていた私が連れて行かれたのは、全く別の所だった。 「集中治療室・・ だって、和明は・・」 そう言う私を振り返って母が言った。
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