白い世界

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「和明君は死んでないわよ。生きてるわ」 「えっ?」 そう言うと、母は私を連れて集中治療室に入った。 奥から二番目のベットに和明が居た。 目には包帯を巻いて、左手、右足にもギブスを付けている。 「和明・・ でもあのAIは・・」 「和明君は最後の力を振り絞ってあのタブレットの設定をしたの。自分が死ぬ前提でね。だからあのAIは和明君が死ななかった事を知らないの・・ だからあんな説明をしてた・・」 私は和明が生きていてとても嬉しかった。でも・・ 「どうして? 角膜は私に移植されたんでしょう?」 「その質問には私が答えよう」 振り返るといつの間にか、後ろに高山先生が立っていた。 「和明君はもともと通常の臓器移植の同意をしていなかったから、彼の意志で移植されるのは角膜だけだった。彼の脳死判定がされて角膜を取り出した後、突然彼の脳が蘇生した。それは本当に奇跡を見る様だった。そこで私達は脳死判定を取り消し、彼を集中治療室に移動させて回復治療に進めたんだ。残念ながら脳が停止していた時間を考えると障害が残った可能性もあるが、意識を回復するのは時間の問題だと考えている。その他は腕と足の骨折以外は大きな問題は無い。視力を除いては・・」 私はまた涙が溢れて来るのを感じた。 その涙は、和明が生きていた喜びと彼の視力を奪った悲しみの両方だった。 「先生。和明は、もう視力を回復できないですね? 私と同じ白い世界で生きる事になるんですね・・」 私は泣きながら高山先生に聞いた。
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