白い世界

1/10
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

白い世界

私は川上夏実、二四歳。 大学を卒業して、現在は総合商社の金属事業部で働いている 私には大学の同級生だった恋人が居る。 坂本和明。彼は日本最大の電機メーカーで、人工知能(AI)の技術者として働いていた。 その日、突然、和明から私の携帯に着信があった。 「夏実、緊急で相談したい事がある。今晩会えないか?」 和明の声は、いつに無く興奮していて、私は何だろうと思ったが・・ 「いいわよ。今日は残業無しで上がれそうだから」 私がそう答えると、和明は虎ノ門ヒルズの“ザ タヴァン グリル&ラウンジ”というレストランを指定して来た。 そのレストランは虎ノ門ヒルズの五一階に有った。 レストランに上がるエレベーターは高速で耳がキーンとなる程だった。 ウェイターに和明の待つ窓際のテーブルまで案内された。 テーブルでは和明が既に待っていたが、私は窓の外に広がる東京の素晴らしい夜景に目を奪われた。 「綺麗・・」 私は一瞬言葉を失った。 「お客様」 はっとして、振り返るとウェイターが私が座る椅子を後ろに引いて待っていた。 「あっ、すいません」 私は頭を下げると急いで席に着いた。 和明が笑っている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!