拝啓

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 拝啓、誰か様へ。  こう寒くもなってくると、ため息をつくと白く着色されてしまいより自分の不幸というか憂鬱さが目に現れるようでしんどくなりますね。たとい生命ある限り不可欠でもあるこの呼吸をしてるだけでも、まるで常時暗い気分にあるときに出るため息を吐いているようで尚憂鬱になり、外の寒さも相まって社会からより一層距離を置きたいと思う今日この頃です。  些か短絡的すぎるようにも思いますが、とっても寒い季節になったので旅に出ました。社会から一層距離を置くために出たかのようにも思えますが残念ながらこれは出張という枠組みに入るようです。旅行すら仕事のひとつになってしまうとは、尚世間が憎い。社会が憎い。しかし、彼らには抗えません。社会という壁の前で私は立ち向かおうと意気込んだところで引き返す以外に選択を見出すことができません。  窓から見える景色は一面雪化粧がされており、ただただ延々と続く光景を見続けるのはどうも疲れたのか眠りに落ちては目覚め、また広がっている雪に飽きを覚えます。  国境の長いトンネルを抜けてもそこは雪国で、その先のトンネルを抜けても雪国です。  田舎の電車は進むのが遅く、また景色も代り映えせずと退屈を過ごすにはもってこいのスポットです。しかし、そのスポットに向かうためにはこれまた私が抜け出そうとしているのとは逆に延々と続くこの線路を辿るのは少々退屈が過ぎませんか?退屈を求めている人は既に今の私と同じく退屈であろうことですし、繁忙、怠惰の有無は関係ないのでは。ということは観光協会はやはりすろーらいふなんて田舎に似合わない横文字を謳い文句にしてやったり顔を浮かべている場合ではありません。こんなところに何かを求めて訪れる人なんているわけはないし、あなたはおかえりの横断幕でもかけていればお役御免です。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!