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「お前も俺にそれを言わせるために、ついてきたんじゃねえのか」
ざくり、と義足の足を砂に埋め込み、タカがミワに向き直ると、ミワはタカを見上げて、ええそうよ、と静かに囁いた。
そのまま二人はしばらく見合った。
お互いの妥協や嘘、かつての幼い恋心といったものを探ろうとでもするように。
どちらが上なのか、値踏みするように。
「私たちはお互いが必要だわ」
まっすぐに飛び込んでくるミワの目に、タカはすでに後悔していた。
「もう少し、歩かねえか」
目をそらし、タカは先の浜へとミワを促した。ミワは大人しくついてきた。
昔は可愛い女だったのに。
俺がいじめたらすぐにめそめそ泣いたのにな。
浜で遊んだ幼い頃の思い出を起こしつつ、タカは眼前の風景を眺める。
ぽかりと浮かんだ月に照らされた砂浜、海辺の家々、そそり立つ岩山に生える松の木。
鏡のように光を跳ね散らかす波、島と島をつなぐ影橋。
「タカちゃん、私、小さい頃タカちゃんが好きだったのよ」
「けっ、調子のいいこと言ってやがる」
目の前に横たわる景色のように、変化はしてもその本質と清らかな美しさはあの頃のまま変わってはいないはずだと、タカはミワのことをそう思いたかった。
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