心雪~音もなく側にあるもの~

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1969年。アポロ11号が月面着陸に成功し、まだ興奮冷めやらぬクリスマスの夜、親父は事故で死んだ。 親父を轢いた人物も子供が待つ家に帰る途中 助手席に置いたケーキが落ちてしまい、拾おうとした時にハンドルを誤って切ってしまったのだ...。 その時の親父は 買ったばかりのプレゼントを胸に抱えたまま倒れていた。 警察から渡された包み紙は模様も分からない程、血で染まっていた... 俺が13の時だ。 今でも机の引き出しにその時のまま仕舞ってある...。 後日、俺が事故現場に行った時 商店街の数人で汚れた道を洗いながら言っていた。 "雪でも積もっていれば冷たい水など使わず、雪よけするだけで綺麗に出来たのに"と。 当時の俺はえらく腹が立ったが、同時に人とはそう言うものなのかと思った。 今考えると彼らの言い分も当然だろう。 寒い中、自分達には縁もゆかりも無い人間の後始末をしていたのだから。 家族にとっては悲しい出来事でも他人には関係ない。 俺だって何処かで誰かが毎日死んでいても飯が喉を通らない何て事は無い。 だけど俺たち家族にとっては冷たく辛い出来事だった。 そんなご当人の親父がなぜか今ここに居る。
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