安帯

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安帯

男の名は 黒須玄斗(くろす げんと) 同級生だが、ほとんど学校に来ておらず、関わりを持つ人はほとんどいない。関わりたいと思う人もいないだろう。なぜなら彼についての噂は危険なものばかりだ。 表には出てないが、数々の暴力事件を引き起こし、血まみれの彼を見たという噂や、時には警察にも手をあげたとか。 噂は噂なので、本当のところは大したことないんだろうと言う輩もいたが、いまこの現状を見て、そんなことは思わない。黒須は危険だ。  俺は知ってたけど。 満足したのか、血まみれになった男を手放し、こちらに目をやる。 「おい、やばいんじゃないのか。」 一晴が小声で尋ねてくる。 「まあ落ち着け。」 目の前の惨状を目にした後だが、俺は黒須が何の見境もなく、殴ってくるやつではないと思った。 高校に入ってすぐの時、黒須が先輩たちと、いや、先輩たちを殴り倒してたのを見かけてしまったんだが、彼は俺に危害を加えようとはしなかった。そこで少し会話をしたような気がしたが、そこまでは覚えてない。 黒須がこちらを見渡す。 「こ、こら。黒須くん。それはさすがにやりすぎだよ!」 先生が逃げ腰で言った。 特に何とも思わないのか、黙ったまま、俺たちの顔を確認している。 「おぉ。 ひさしぶりじゃねえか。」黒須が俺の目を見ながら言った。 「え、俺? 久しぶり..」 俺のこと覚えているのか。特に印象に残ることはなかったはずなのに。 「あ~。 何か月かぶりに学校来て良かった~~ こんな楽しいことが始まるなんてよぉ~。 なんかひっくり返ったかと思えばぁ、血の気が多そうなやつらが歩き回ってるじゃねえかよ。」 血の気が多いとは、囚人のことか、俺らからしたら黒須だけどな。 「おい、お前。おれとこねえか?」 「な、なんで俺が?」予想外だった。 「行くって言っても、どこへ?」  動けるのは、学校内ぐらいだろう。 「穴だよ。詳しいことは知らねえが。こいつらがそっから出てきたのを見たんだ。楽しそうだろぅ?」 「まだやめとくよ。情報が全然足りないし、危険な奴らがうようよいそうだ。」 それに、黒須と行動するのも危なっかしい。 黒須は俺の目をしばらく見ていた。疑問?に感じているのか? まるで俺が喜んでついてくとでも思っていたのか?  「あぁ。ならいい。」 黒須は去って行った。 恐らく穴のほうへ行ったのだろう。
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