風吹く僕らの入学式

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「えー、生徒諸君…」 校長の話を、僕はボーッとしながら聞いていた。話の内容をよく覚えてはない。ただ、あそこのジャージを着ている先生は怖そうだなぁ。とか、生徒会長が美人だなぁ。というような印象に残った事のみ覚えていた。その日の入学式以外で覚えている事と言えば、ただ学校へ続く道の途中、桜がいつもより赤く咲いていた事だ。他のみんなにとっては、この高校に入学できたのは嬉しい事なのだろう。だが、僕にとってはこの高校ですら簡単に入学できた。高校こそは、平凡に、波風立てず過ごす。自惚れと取られるかもしれないが、僕は勉強の才能があり、いわゆる天才と言われた。そして、それが原因で周りから虐められ、妬まれ、地獄のようだった。その生活から逃げる為、僕はこの高校に入学したのだ。そう、高校こそは、 平凡な青春を過ごすため! 「そこの生徒!こっちへ来い!」 波風立てたくなかったんだけどなぁ… 桜舞う時期、僕らは各々の感情を持って高校への一歩を踏み出した。 この物語は、大人になりきれない生徒達と先生1人の、甘酸っぱいようなほろ苦いような…そんな物語。 「おい!なんだこの髪の毛は!」 「ロングヘアーですけど」 般若のような顔をしたジャージの教師に怒鳴られ、僕は顔をしかめながらそう答える。 「そういう事を聞いてるんじゃない!」 「そんなに叫ばない方がいいですよ。体に良くない」 「いいから明日までには髪の毛を切ってこい!安藤!」 般若の先生はそう叫び、足音を大きく立てて去っていく。 「…僕のこの髪、やっぱり変だよなぁ。」 注意されるのも仕方がない。髪は伸び放題で、前髪で目が隠れてしまっている。髪全体はボサボサで、手入れされてないのが見て取れる。それほど酷い。 「…帰りに床屋寄ろう」 僕は帰路につく。ワカメのような髪をそのままに、手にちょっとばかしのお金を持って…訂正、1000円を持って…
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