白王

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白王

黒と白、数多の駒が盤上を飛び交い、戦況は目まぐるしく変わる。歩兵が数の力で騎兵を穿ったかと思えば、騎兵は足の速さで弓兵を凌駕し、弓兵は歩兵を遠くから射抜く。手に汗握る攻防戦。それが、目下で繰り広げられているというのに私の心は冷めきっていた。 「黒石。8-4-弓」 対峙する二人の傍らで読み手が駒の動きを伝え、私の脳内で戦火の中心地から少し離れた位置に黒い弓兵が浮かび上がった。 「こ、これは。すばらしい・・・」 一見すれば絶好のポイントに絶好のタイミング。突然の妙手に場内には小さなどよめきが起こり、私も『良い目を持っている』と胸中で相手を褒め称えた。・・・が、これは真剣勝負の世界。私は淡々と次の一手に手をかけた。 「白王。8-3-歩。騎、弓取りです」 僅か一手。私は歩兵をただ一歩だけ前進させ、死に手と思われていた騎兵に一筋の活路を導いてやった。そう。先ほど現れた弓兵へと一直線に突き刺さる一筋の活路を。 「・・・は?」     
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