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「戦績を聞いてはおらんよ。知りたいのは、お前さんが今、軍石のことをどう思っておるかさ」
「・・・」
突然尋ねられた数奇な質問に私は暫し考えたが、答えは出ない。どう思っている・・・?白王を襲名してから、私はただひたすらに強者であり続けることに必死でそんなことを考え事もなかった。私が黙りこくるのを見かねて元白王は続けた。
「三年前の白王襲名戦を覚えとるかい?」
「・・・ええ」
私が黒石を扱った最後の日だ。
「儂も今でも覚えとる。僅かデビューして一年足らずの小僧に白王の座をとられちまった日だからのぉ」
元白王は素直に悔しさを言葉にした。
「ふふ。そうだったんですね」
「ああ。はらわた煮えくりかえるとはあの事だろうのう。・・・それでも、まぁ、実を言えば少し嬉しくもあったよ。何せ、初めて儂より軍石を好いとる奴に会ったからのう」
「・・・」
確かに当時の私は三度の飯よりも軍石が好きな軍石少年だった。盤上で踊る白と黒の
闘いに魅入られ、およそ寝ているとき以外は常に軍石の事を考えずには居られないほど軍石が面白くて仕方なかった。
「儂が初めて白王を襲名する時、元白王。お前のじいさんから軍石における最も大切な事を教わったよ。それこそ、試合に勝つこと以上のな」
「じいちゃんが?なんと言ってましたか?」
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