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「まだ秘密じゃよ。明日の決勝戦で教えてやるわい」
元白王がそう言って笑いながら去って行くと、現白王としてのプライドだろうか?私の口からは勝手に言葉が洩れていた。
「・・・負けませんよ。僕は」
・・・
朝日が昇り、決勝戦を迎えると、小さな正方形の盤面を挟んで私と元白王が対峙した。新聞紙では3年前のリベンジと唄われたが、実際に今の状況は三年前とは真逆。私が白王として挑戦者を迎え撃つ形となる。
「よもやお前さんに黒石もって挑まなければならなくなるとはのう・・・」
元白王の軽口もすでに戦闘態勢となった私には届かない。
「ほほ。それじゃ、様子見から行こうかの?」
バシッと個気味良い音が盤上から生まれたが、読み手は一瞬素の声を上げ、すぐに自分の仕事を思い出したように言い正した。
「・・・え?あっ!すみません。黒石。2ー8ー弓」
少しばかり私の時間も止まり、再び動き出すころには怒りがこみ上げた。
「・・・ふざけているんですか?」
「なんのことじゃ?儂は常に大真面目じゃよ」
ニヤニヤした笑みを崩さずに元白王は答えるが、軍石の初手は歩兵からであり。何千、何万という大局がその理由を証明している。
「そうですか。悪いですけど、茶番には付き合いませんよ」
「白王。2-3-騎」
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