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「人に借りのある人間は、何かをあきらめなきゃならない。何もかもを持ち続けることはできない。あんたの場合だと……新しい服や靴をあきらめるか。あるいは、そこにすっ転がってるボンクラが言ってたように、女としての尊厳をあきらめるか。または、健康をあきらめるか、だな」
「健康……?」
女がぼんやりと繰り返した。たぶん、その選択肢がいちばんマシに聞こえたんだろう。
「生体部品を売るんだ。あんたが持病のない健康体なら、結構いろいろなものが売れる。こんなものでも金になるのか、と驚くようなものまで売れるぜ。同意してくれれば、すぐに摘出の準備をする」
「準備をするって。まさか……あなたがやるの? お医者さんじゃなくて?」
「任せとけ、慣れてる。俺は女の人を痛めつけるのは嫌いだが……生きた人間を解体した経験はあまりないから、縫合はだいぶぎこちないかもしれない。そのへんは勘弁してくれよな」
にっこり笑ってやった。
ボリスラフに対する暴力を見せつけてやった後だから、普通の笑顔ほど恐ろしく見えるだろう。
案の定、女は蒼白になり、目に見えて震え始めた。
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