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アパートを出て会社の事務所へ戻る途中、ボリスラフはぶつくさと文句ばかり垂れ流していた。それは間違いなく、換金するために女の部屋から持ち出した新品未開封のバッグや靴がかさばるからとか、そういう理由ではない。
「てめえ……この件は社長に報告するからな? 先輩に暴力をふるいやがって」
大量の荷物を抱えて舗道をよたよた歩く俺たちを、まばゆい太陽が見下ろしていた。
「『女には甘い取り立て屋』かよ。笑わせるぜ」
「『強そうな男の前ではおとなしいくせに、女にだけ強気な取り立て屋』よりマシだ。……あんた、なめられてたんだぜ、あのおばさんに。わあわあ泣いてたの、あれは全部ウソ泣きだ。気づいてたか?」
「……」
「あんたの代わりに、俺がおばさんを脅してやったんだ。しっかりとな。役割分担が気に入らないからって文句言うんじゃねーよ」
「……おまえ……いつも言ってる『生体部品を摘出してやる』ってアレ……ハッタリだよな? 脅すために言ってるだけだよな?」
「あー……うん、まあ、ハッタリと言えばハッタリかな」
「そ、そうだよな。そうだろうと思ってたぜ」
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