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「おまえ、いったい何なんだ!?」
アパートの建物を出て、陽光の降り注ぐ舗道へ足を踏み出した瞬間、耐えきれなくなったようにボリスラフが叫んだ。
俺は肩をすくめてやった。
「えーっと……取り立て界の期待の新人、かな?」
ボリスラフはお手上げだ、という仕草をし、「いきなり撃つか、普通? ムチャクチャだ」と天を仰いだ。
この中年にさしかかった男は、ユロージヴイ金融の中堅社員だ。長年やくざな稼業に携わってきたせいか、死んだ魚のような目つきで、口元も永遠の不機嫌にひん曲がっている。
ボリスラフは、新しく雇われたばかりの俺に取り立ての仕事を教えるため同行している、はずなのだが。実際のところ、教育係としては役立ってない。俺がタンクトップ男を脅している間、この男はいるのかいないのかわからないぐらい静かだった。仕事のやり方は一度も見せてもらえていない。
「銃を渡されてる、ってことは、撃ってもいいって意味だろ? 他に何に使うんだよこんな物」
俺はうんざりしているのを隠さずに言い返した。仕事もせずに小言ばかり垂れ流す教育係なんか邪魔なだけだ。
ボリスラフの「へ」の字に固定された唇がひくひくと動いた。
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