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愛する人がいなくなってしまった――それは理解出来た。
けれど、私がここでわんわん泣いたところで、果たして彼は戻って来るのか?
ここで泣きわめき、彼の名前を叫んだところで、彼はその動かない身体を動かすのか?
……そんなことを考えていたから。
私は、自身の中にあった“悲しむ感情”だけを。
凍ってしまった“悲しむ感情”を切り離して。
彼が残してくれたお金を少しずつ使いながら、何とか子供達を健やかに成長させることが出来た。
でも当然、そんなものは長く続かない。
彼が残したお金と言っても、そこまでの大金ではなかったのだから。
だから、私は子供達が中学校に入学した時に、久しぶりに働きに出かけた。
久しぶりの“仕事”に、慣れるのは大変で、何度かキツいこともあったけれど。
それでも、我が子等の為と思えば、乗り越えることが出来た。
だって……私には悲しむ暇すらないのだから。
悲しむ心自体が無いのだから――私は私自身を悲しむことなど無い。
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