幸せの配達人

1/13
前へ
/13ページ
次へ

幸せの配達人

 それは、しんしんと雪の降る、ある夜の事。  女の子がお家でお留守番をしていると、玄関をしゃんしゃんと叩く音が聞こえました。  女の子は剥いていた林檎を冷蔵庫に入れると、上着を羽織って玄関に近付きます。  しゃんしゃん。しゃんしゃん。  音は聞こえているのに、姿は見えません。  空耳でしょうか?  そう思った女の子が首を傾げ、部屋に戻ろうとした、その時。  しゃんしゃんっ!しゃんしゃんっ!  一際大きな音が聞こえたかと思うと、ガラス戸の向こう側に一瞬だけ、真っ白な何かが見えました。  どうやらガラス戸をしゃんしゃんと叩いていたのは、その真っ白な何かの様です。  女の子がしゃらららとガラス戸を開けると、それはぴょんと女の子に飛び付きました。 「わっ!」  女の子は尻もちをつきながらそれを受け止めます。  それは、雪と木の葉と赤い木の実で出来た、真っ白な雪兎でした。  その雪兎は、冷たくはなく、その手触りも、本物の兎と良く似ていて。  女の子が首を傾げると、雪兎もそれに合わせて「きゅっ?」と首を傾げました。  その仕草が、なんともおかしくて、可愛らしくて。 「ねぇ、雪兎さん。  貴方はいったいどこから来たの?     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加