幸せの配達人

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 どうして私の家のガラス戸を叩いていたの?」  女の子は微笑みながら雪兎に尋ねます。  すると雪兎は鼻である赤い木の実をひくひくと動かすとぴょんと女の子の手から飛び降り、ぴょこぴょこと玄関を抜け、外へと出てしまったのです。 「待って!雪兎さん!」  女の子は雪兎を追い掛けて外へと出ると、辺りを見渡しました。  真っ暗な、夜の街。  灯りは、街灯と女の子の家の物だけ。  雪兎は少し離れた所から、じっと女の子を見ています。  …それはまるで、女の子が来るのを待っているかの様で。  女の子は少しだけ、怖くなりました。  この明るい場所から…自分の家から離れてしまったら、暗い暗い、夜の闇の中におちてしまいそうで。  …けれど、それは一瞬の事。  どきどき。どきどき。  恐怖とはまた違う心臓の高鳴りが、雪兎に着いて行こうと、そう告げていて。 「……よしっ」  女の子はぐっと気合を入れて、雪兎を追い掛けます。  雪兎は「きゅっ!」と嬉しそうに鳴くと、ぴょこぴょこ、ぴょこぴょこと飛び跳ねて、夜の闇の中に消えていきました。   ♪  ぴょこぴょこ、ぴょこぴょこ、雪兎。  てくてく、てくてく、女の子。  一人と一匹は、街を歩きます。  …やがて街並みも、人の気配も消えた頃。     
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