幸せの配達人

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 女の人は名刺を女の子に差し出しました。  女の子が受け取った名刺には、沢山の数字と、どこの国の物か、そもそもこの世界の言葉かも分からない言葉、そして、 「……幸せの配達人?」  そう、日本語で書かれていたのです。 「そう!私は幸せの配達人!  私は沢山の人を幸せにする為に様々な事をしているんだっ!」 「…は、はぁ…」  女の子はちょっとだけ後ずさりしました。  だって、見た目も、言っている事も、明らかに怪し過ぎますもの。 「うむうむ!君のその態度は実に正しい!  私も初めて幸せの配達人に出会った時は君と同じ反応をしたもんさ!」  女の人…幸せの配達人は大きな声で笑いました。どうやら悪い人では無いようです。 「…それで…あの、どうして幸せの配達人さんは私の所に来たのですか?」 「うむ、良い質問だ。  何を隠そう私は今回が初めてのお勤めでね。  …初めてのお勤めは君にと、そう決めていたんだ」  配達人さんはくるくるステッキを回し、てくてくと歩き回りながら答えます。 「…私を、最初に?」 「うむうむ」 「……でも私、幸せですよ?」  そう。女の子は、幸せだったのです。  たとえお母さんが昼も夜も働いていて、滅多に会えなくても。     
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