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ポツンと小さな明かりの灯る家で、ずっと独りぼっちでも。
…そんな時、女の子の心が、ズキンと痛んでも。
女の子は、幸せだったのです。
…本当の本当に、幸せと思っていたのです。
「……そうか」
配達人さんは、悲しそうに微笑みます。
…しかし、それも一瞬の事。
「それなら君にはご褒美をあげようっ!」
「…どうして、ですか?」
「ほら、お母さんがいない時、君がずっと家事をしていただろう?
買い出しに行ったり、ご飯を作ったり、食器を洗ったり、洗濯をしたり」
「あ、は、はい。
…あの、どうして知っているんですか?」
「企業秘密だよ企業秘密」
「で、でも、それって普通の事…」
「たとえ周りから見て普通の事であったとしても、それは君が頑張っていない事とイコールでは決して無いよ。
それだけは、どうか忘れないで欲しい」
…配達人さんの言葉に、女の子はちくんと、胸に痛みが走った様な気がしました。
「さぁ!これで私と行く理由が出来たな!」
困惑する女の子をよそに、にんまりと笑う配達人さんは、くるくると上機嫌にステッキを回しました。
帽子の上の雪兎もくぅくぅと嬉しそうに鳴きながら、ぴょんぴょん飛び跳ねています。
配達人さんは、女の子の手を取りました。
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