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「ーー永遠に一つになりました」
「めでたし、めでたし。」
そう優しく言い終えると、ゆっくりと本を閉じ膝の上に置いた。
横には愛しい娘がロウソクの灯りを受け、キラキラと輝く瞳でこちらを見ていた。
「どうかしたの?」
「お母さんは、このお話が好きだね」
確かに思い返せば、この話は他の話に比べて読み聞かせている回数が多い。
が、特別この話を好いているわけでもなかった。
「んー、そうね、嫌いではないわよ」
布団の掛かった小さな体を優しく撫でながら微笑む。
「でも、お母さんこのお話読む時はとっても優しい顔をしてるよ?」
「そう、かしらね…?」
特にそんな風に読んでいる自覚も無かったので首をかしげながら言うと、「絶対そうだよー!」と自信満々に娘は言った。
「そうかもね」
とクスッと笑いながら言うと、娘は笑われた事に機嫌を損ねたのかムスッと頬を膨らませて反対の窓の方を向いた。
「ふふっ、ごめんごめん」
また、少し笑いながら謝るとムッとした顔のままこちらに向き直った。
「でもね、ノアこのお話は少し苦手。」
「あら、なんで?」
「だってこのお話はこれで終わらないもん」
「…え?」
「このお話はお母さんが作った理想の終わり」
「まだ、悪夢は終わらないよ」
「起きて、お母さん」
「まだ寝るには早い」
「やるべき事が残っている」
「さあ、目を覚まして」
「これは終わりではない」
「始まりだ」
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