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洞窟を出て二時間ほど歩いただろうか。
森を抜け、草原を切り開いて作られた道に出た。
私達の目指している世界の真ん中に位置する国、クルクアは私の住んでいた村から、荷馬車で半年ほどかかる場所だ。
最初の二日間は、荷馬車に乗せてもらい移動していたが、途中に森があり荷馬車では迂回しなくてはなら無くなった。地図を見る限り、歩いて森を抜けた方が早いと判断し歩いて抜けた訳だが、次の村に着くまでは歩くしか無さそうだった。
「何も見えないねー…」
森を抜けてからずっと歩き続けているが、一向に景色が変わることは無かった。
「少し、休憩しようか」
そう言うとハルは、道を少し外れた所にあった木の幹に寄りかかるように座り、水を飲んだ。
私も隣に座ると腰の鞄から地図を抜き取り、道を確認した。やはり私達は南から森に入り反対側の北に村があった。
ハルが横から地図を覗き込んできた。
「森を抜けたらすぐに村に出るはずなんだけどな、森の中で道を間違えたのかな?」
「方位は確認しながら来たからそれは無いはずなんだけどなあ…」
落ちていた木の枝を方位確認魔法をかけると進んでいる方を北と指した。
やはり合っている。
「おかしいな…うーん、もう少し進んでみようか」 そう言うとハルは立ち上がり道に出た。
私も続いて立ち上がろうとすると、
「キャッ!」
後ろから服を引っ張られ尻もちを着いてしまった。
「大丈夫?!」
「うん、転けちゃっただけ…」
後ろを確認しても何も無かった。枝か何かに服を引っ掛けていただけだろうと思い、特に気にすることも無く立ち上がるとズボンの砂を払った。
また代わり映えのしない道をしばらくハルと雑談しながら歩いてると
「キュウ…」
変な音がした。
「え?」
咄嗟に変な音のした方、つまり後ろを見ると、何か小さな影が茂みに隠れた気がした。
「どうかしたの?」
ハルには音が聞こえていなかったらしく、不思議そうな顔で私の方を見ていた。
「今何かがいた気が…」
「キュウ!」
今度は前から変な音がした。
この音には流石にハルも気づいたらしく、二人で同時に前を見ると道の真ん中に、白色のふさふさした毛、三角の耳に、二つの尻尾を持った赤い目の狐のような小さなモンスターがちょこんと座っていた。
「も、モンスター?」
ハルも私も目を丸くして、その小さな「モンスター」と言うには可愛すぎる生物を見ていた。
「見たことない種類だね…」
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