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「キューキュー!」
威嚇していると言うよりは喜んでいるような声で鳴きながら近ずいてきた。
「気をつけてね」
ハルは少し警戒すると、私を庇うように身構えた。
そのモンスターは迷わず私の方に近ずいてくる。攻撃しようにも出来ずに戸惑っていると、私の足元でちょこんと座ると足に頬ずりをしてきた。
「「えっ…?」」
二人とも拍子抜けをして固まり、顔を見合わせた。
「仲良く、なりたいのかな?」
私はその可愛らしい姿につられてしゃがみこんで撫でるとキュッキュッと目を瞑り喜こんだ。
「可愛いね」
ハルもその様子に安心した、その小さなモンスターに微笑みながら手を伸ばすと、サッと私の後ろに隠れると警戒したように尻尾を立てた。
「ふふっ、ハルは苦手なのかな?」
笑いながら抱き上げると警戒が溶けて落ち着いたようだった。
「そんな…」
ハルが、がっかりと肩を落としたのをクスッと笑いながら、
「キミは何処から来たのかな?」
と撫でながら聞くと、腕の中で丸くなって鳴いている小さなモンスター?は顔を見上げて私と目を合わせると、大きな目をきゅるりと光らせ首を傾げていた。
「バイバイ、元気でね」
しばらく撫でて地面にそっと戻すと別れを告げて歩き出した。
「可愛かったね」
ハルに声をかけると、「そうだね」と少ししょんぼりしながら言った。
「ふふっ」
「笑わないでよー…」
そう言われても堪えられずに笑いながら歩いていると、ふと目の前に村が見えた。
終わりの無いようにも見えた道は唐突に終わりを迎えた。
あまりにも唐突なことに驚いていると、
「キュ!」
さっきのモンスターの声がした。
後ろを振り返ると道の真ん中に座る白色の小さな姿と、その後ろにはだいぶ前に抜けたはずの森があった。
二人揃って呆然と立ちつくしている間に、走って近づいてくると、私の腕に飛び乗った。
「キミが、道を短くしてくれたの…?それとも…。」
「キュー!」
そうだと言っているようにも、ただ喜んでいるだけにも思えるように鳴くとそのまま腕の中で落ち着いてしまった。
「…着いて来たいのかな?」
呆然としていたハルがようやく声を出した。
その小さな可愛らしい姿を見ながら少し悩んだ結果、旅の仲間は二人と一匹になったのだった。
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