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理衣は久しぶりの彼とのおうちデートを楽しみにしていたのだ。 それは数週間前「仕事忙しくて最近栄養とれてないんだよな」と言っていた聡にサプライズでブランチでも作ってあげるか、と土曜の朝からスーパーに寄って、2年前に「いつでも来ていいから」ともらった合鍵でアパートの玄関ドアを開けた瞬間に起こった出来事だ。 部屋を飛び出して、気がつけば電車に乗り、ドアの窓越しに流れる景色を見ていた。見ているようで実は窓に映った自分を眺めている。 先週のトラブルですっかり参ってしまった時は「がんばれ」とLINEで励ましてくれたはずなのに、一体どこから自然消滅だったんだろう。 ここ数週間、そろそろ聡と結婚してもいいな、と思っていた自分の淡い夢が指の隙間からいつの間にか零れてなくなっていたことに気づき、理衣は唖然とした。 会社を辞めたくなったのは最近のことじゃない。もともと自分のやりたい仕事でも第一希望の企業でもなかったこの会社で、何度もトラブルに巻き込まれ、揚句に前担当者のミスなのに自分のせいにされ、どう考えても格下げだろう部署に異動させられたら、見切りも付けたくなる。     
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