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帰宅途中、電線工事の下をおそるおそる見上げながら左、そこから30メートル徒歩1分が私の家だ。
一戸建ての三階建てでマッチ箱みたいな小さな住宅が並ぶその中でも白けた壁で、門のあたりにガチャガチャと自転車が数台とめてあって、ママが途中でやめたガーデニングの植木鉢が並んでいる横に隠れるように弟が飽きた虫箱も置いてあって、駐車場がついているのに車はない。
前はあったんだけど全員自転車に乗れるようになったからもういらないんだとパパが売ってしまった。
玄関で「ただいま」はとりあえず言うけれど、それはただの義務に過ぎない。早く宿題をしなければ。今日の宿題はいつもより多く期限も短いのだ。
産休明けの家庭科の先生が張り切り過ぎで、家庭科なんて調理実習だけやらせておけばいいのに筆記の宿題を無駄に出してきた。
「試験もない時期だし、できるできる」
と、嬉しそうに「先生頑張って作ったんだー」だって、お前の発表会か。
毎日毎日重い脚を引き摺りバベルの塔さながらの階段をわざとどすどすと頂上を目指す。そうだ、明日までの数学の宿題もまだ残ってんだった。
時間がない時間がない時間がない。中学生は時間がない。
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