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部屋の中が薄暗くなった。外を見れば、夜が急激に空を覆い始めている。
電灯からぶらさがる紐を引き、電気をつける。狭い部屋の中が明るくなり、桜井はソファーに腰かけた。
冬の夜は早くて長い。部屋の中にたった一人でいると、ふと子供のころを思い出してしまう。
両親を事故で失った初めての冬。誰もいない部屋で、冬の夜風が窓ガラスを叩く音に怯えた幼いあの日。あの時の淋しさと不安が桜井を襲い、思わず着込んだカーディガンごと自分の身体を抱きしめると、またカーディガンから佐藤のフレグランスがふわっと立ち上る。
ひとりなんて慣れているはず……だけど。
この香りは、不思議と心があったかくなってくる。
時計は午後5時を回ろうとしていた。
今年が終わるまであと7時間。
たった一人っきりのニューイヤーイヴ。
「こんな年越しもたまにはいいものですね。しかし……ああ寒い。ベッド借りちゃいましょう」
布団は最高の暖房器具だ。すっぽり頭まで被れば温かいはず。
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