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大晦日のフレグランス
やっぱり自分はどうかしているのかもしれない。
桜井恭司は、ながぁいため息をついた。
今日は12月31日。大晦日だ。
桜井がやってきたのは、九州の田舎町で医師をしている佐藤裕二が住む職員寮。
櫻井はこの旅行のために、今年の冬休みを少し長めにとった。
別に佐藤に会いたかったわけじゃない。
佐藤を驚かそうと思っただけだ。
いきなり行ったら驚くだろうか。単純ないたずら心からだった。佐藤を驚かすためだけというのも味気ないので、12月に入ってから桜井は毎日残業をし、仕事納めを2日前倒しした。
綾樹は連日残業をする桜井に「無理をするな。倒れてしまうぞ」とやんわり注意しつつ、時折差し入れを、そして時折残業に付き合ってくれた。
冬休みを前倒しすることも綾樹は快諾してくれたが、「遊ぶのは構わないが、気を付けるんだぞ」とどこか心配げでもあった。
在来線にのんびり揺られ、途中下車をしながら、やっとたどり着いた佐藤の自宅。
本人の家に行ってドアホンを鳴らしてみるも人の気配がなかったので、佐藤に在宅かどうか玄関前でLINEを投げたら、程なくして「1月2日の夜まで家にはいない」と返信が来た。
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