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驚いて声のしたほうを仰ぎみれば、そこには明日まで帰らないはずの、ここの家主が肘枕をしてニヤニヤ笑っているではないか。
一気に目が覚めた。
なぜ、どうして?! どうしてここにいる?!
「ゆっ、裕二?! なんでここに?!」
「なんでって、ここ、俺の家」
「ありきたりなボケをかまさないでください。あなたは明日まで帰らないって言ったじゃないですか?」
「だからだよ」
佐藤は腕を伸ばして、桜井を抱きしめた。
「おまえが俺に家にいるかどうか尋ねたのなんか、これが初めてだったんでな。東京にいるおまえが、なんで俺の在宅を気にしてるか考えた。もしかしたらおまえがサプライズかまして来てるんじゃないかと思って、正月の夜勤を代わってもらった。帰ってみたらドンピシャだ。全く俺は運がいい。しかし、腹立たしいことがある」
「……えっ?」
腹立たしいこと?
勝手に上がり込んだことかと尋ねると、佐藤は『違う』と否定した。
「俺が怒っていることはふたつある。一つ目は部屋が冷えてることだ。ここは下手すりゃ東北より寒い日だってある。なぜ暖房を入れなかった? エアコンくらい使ってかまわん。おまえがたったひとりで寒い思いをしていることが俺はつらい。もうひとつはーー」
そこで言葉を切り、佐藤は桜井の額に自分のそれをくっつけた。
「ーーおまえ、熱がある」
「熱?」
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