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確かにここについてから、妙に頬は熱かったが、それは風邪じゃなくて。
きっと、それはーー。
『あなたの香りに包まれていたから』なんて言えない。
「俺にときめいて熱を上げるのは嬉しいが、この熱は間違いなく身体を冷やしたからだ。暖房なしで薄着は風邪をひく。おまえはそんなに身体が強い方じゃないんだから」
「そんな、私はちゃんとーー」
「風邪かそうでないかくらいはわかるぜ? 俺は医者だからな」
佐藤は肘枕のままで、桜井に唇を重ねていく。
「唇もカサカサだ。こりゃ高熱だな」
「でも私は、今日東京に戻るつもりでーー」
「だめだ。今日はベッドから出せない」
「でも仕事が」
「今日は1月1日だ。仕事始めなんてまだ先だろ。それとも、新城はおまえに冬休みもろくにくれないのか?」
「そんなことないですけど」
むしろ冬休みを余計に貰ったけれど。
「早めに帰って治します。仕事始めに影響が出ると困りますし、あなたにうつしたら」
「仕事始めに間に合わなければ、あの堅物には俺から連絡してやる。それに俺には絶対にうつらない。だから予約便はすべてキャンセルしろ。大丈夫だ、こんな僻地でもスマホはちゃんと圏内だからな」
「……あなたはいつも強引だ。私の都合なんか本当に考えない」
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