大晦日のフレグランス

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 ふるえる指を伸ばして佐藤の頬を包むと、佐藤は「冷たいな」と笑う。 「こんなに指先は冷え切っているのに、おまえの身体はとんでもなく熱い。だからと言って、ここで引き下がれない」 「かまいません。あなたになら、私はもう壊されてもいい。この目も口も、頭の中も、あなただけにしかむかないようにして……」  息も出来ないほど、佐藤が愛しい。  それは熱のせいじゃない。 「恭司……」  佐藤の瞳が鋭さを湛えた。だがその視線は、真っ直ぐに桜井に注がれている。視線だけなのにそのまま佐藤にすべてをさらけ出しているような気さえする。  早く、彼のものにして欲しい。  この飛び出していきそうな恋心が、切なさに迷い、痛むことの無いように。  佐藤に向かって、想いが走り出す。 「抱いて、いいな?」 「はい……」  涙混じりに頷くと、佐藤の身体が桜井に重なる。  彼のフレグランスに全身で感じながら、桜井は身を委ねる。  ーー長い間、自分の気持ちに気づけず、錆びたままだった運命の歯車が、ゆっくりと動き始めた。  それはこの先の幸せを作り出していくはずのもの。
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