大晦日のフレグランス

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「布団をどけたら寒いぞ」 「これからあったかくなります。だから平気……」  佐藤は渋っていたが、桜井がよいしょと自分で掛布をどけようとするので、仕方ないなと苦笑しながら掛布をめくってくれた。 「おまえから何かしてくれるのは嬉しいが、これでも着てろ」  いきなり桜井の肩にふわりと柔らかいものがかけられた。それは桜井が寒くて拝借していた佐藤のカーディガンだ。 「しわになってしまいますよ。それに今から……するんだから……汚れてしまう」 「かまわん、その時は洗えばいい。だが俺はこれをおまえに着ていてほしい」 「私には大きすぎませんか……」  素肌に纏ったカーディガンはかなりぶかぶかだ。袖は指先しか出ないし、裾は長すぎて、カーディガンと言うより、タイトなミニワンピースのようだ。お尻をぺたんとつけてベッドの上に座り込むと、佐藤はひゅうと口笛を拭いた。 「いい格好だ。見えそうで見えないあたりが実にいい。男のロマンだな」 「そんないやらしい目で見ないでください……」     
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