大晦日のフレグランス

22/43
前へ
/44ページ
次へ
 自分はそんなに煽情的に見えているのだろうか。恥ずかしくてつい身を捩ると、またふわんと佐藤のフレグランスが立ち上る。この香り……くらくらして脳が灼けてしまいそうなほど、愛しさで全身が熱くなる。   だが、そこまで佐藤に溺れている自分を見せたくなくて、桜井は唇を尖らせる。 「あなたが着ろって言うから着たんですよ。そもそもカーディガンは素肌に着るものではないでしょう?」 「かわいらしく俺を誘うおまえが悪い。だが風邪っぴきであることに違いはないから、カーディガンは着ていろ。かわいいおまえの色気がそれだけで増幅されるし、そいつは結構いい毛糸で作られているから、素肌に着ても刺激はないだろ? まあ、俺だけがその姿に刺激されてるけどな」 「まったく……あなたは変わりませんね」  デリカシーなど佐藤に期待していない。だが、今はそれでいい。  それが、桜井が愛してしまった男なのだ。  次は自分が佐藤を気持ちよくしてやらなければ。桜井は、男の強直に視線を向けた。  いつも桜井は受けているばかりだったから、こんな時くらい、彼にも気持ちよくなってほしい。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加