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僕はぐるぐると催促しはじめたおなかをなでながら、馬城さんに声をかけた。
「……あのー、そろそろ終わりにしないかな? 馬城さん。早く昼ご飯をすませないと、空腹のまま五限目を受けないといけなくなるから」
「そうね。じゃ、今日はこのへんで」
まるで憑きものが落ちたかのように、馬城さんは溜息をついて普段の調子に戻った。
「いつも思うんだけど、この練習いる?」
「いるに決まっているじゃない。スポーツと一緒で練習を怠っていると、いざというときに動けなくなる」
僕の問いに、馬城さんは力強く肯定した。
つまり、先ほどのやりとりはすべて茶番。風紀を乱した生徒が現れた場合を想定した練習なのだ。馬城さん曰く、頭の中が真っ白にならないため、だそう。
けれど、この練習には予定も台本もない。ゲリラライブのようにいきなり行われるので、つきあわされる僕は毎回アドリブで対応する羽目になる。
「でも、僕の知るかぎり、風紀を乱すような生徒はいなさそうなんだけど」
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