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中学の時には授業が眠いと感じたことはなかったのに、高校生になって急に授業が退屈になった。
今は五限目。私はうとうとしながらさっぱり分からない数学の授業を子守歌代わりに聞いていた。
その時だ。
「相原」
数学教師の園田ではなく、クラス担任の山添が教室の引き戸の前に立って手招きしていた。
眠っていたのを注意されるのかとどきどきしながら慌ててドアの前に行く。山添は私が廊下に出るとドアを閉めた。
「相原。落ち着いて聞いてほしい。相原のお母さんが職場で倒れたと連絡があった。病院はさくら中央病院だ」
「え?!」
「早退したいなら、早退しても構わないが、相原、どうする?」
私の父は他界している。私にはもう母とみぃしかいないのに。
「早退します!」
私は言うと、教室に戻って鞄に教科書類を詰め込み、駐輪場まで駆け出した。
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