13人が本棚に入れています
本棚に追加
受付で母の病室を聞いて、走りたいのを我慢しながら早歩きで病室に行った。
「お母さん!」
病室のドアを開けて呼ぶと、同室の患者さんたちが一斉にこちらを向いた。
「泉美。静かに」
母は一番手前のベッドに横たわっていた。顔色はよくなかったが、声は普段通りだった。
私は母のベッドのわきに座ると母の手を握った。母は大丈夫だからというようにその手を握り返す。その腕には点滴がされていた。
「ベッドを少し起こしてくれる?」
私は母に言われて、ベッドの角度を調節した。
「急に眩暈がして、意識を失ってしまったのよ。貧血と過労が主な原因だそうだけれど、念のため検査入院をすることになったの」
「眩暈? お母さん、最近多かったの? 眩暈が起こること」
「少しのふらつきはね。今回みたいなことは初めてだけれど。
学校を早退するほどのことじゃなかったのに」
「だって、心配だったんだもん」
私は思ったよりも元気な母に安堵して涙腺が緩んでしまい、涙をこぼした。
「あらあら、泣くようなことじゃないのに」
母はもう一度ぎゅっと私の手を握った。
「大丈夫だから、家に帰りなさい。みぃも待っているわよ」
私はそれでも一時間ほど母のそばに居てから家に帰った。
最初のコメントを投稿しよう!