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そして私はどこかの通りを抜ける。招き猫が一匹立っている。その道を抜けると赤レンガでできたもんがある。そしてその先に小さく光る何かが見えた。
霞む視界でそれが何かこの建物であることがわかった。私はそこまでいくことにした。なぜなら、私はもうフラフラだったからだ。
(ああ、お昼ちゃんと取ればよかった)
雪で埋まった石畳を踏み、私はそこで倒れそうになった。しかしなぜか体はいまだに宙だ。そこには誰かの手があった。私は最後にこう言った。
「な、何か……あ、温かい……ものを……」
と。
◇◇◇
私が目を覚ますと、そこは建物の中だった。温かみのあるその空間は、私以外には誰もいない。
私のコートはハンガーにかけられ、壁にかけられている。その間私はピンク色の毛布をかぶっていたらしい。
私がキョロキョロと辺りを見回していると、不意に声をかけられた。優しい声だった。
「気がつきましたか?」
その声の主は、バーテンダーのような格好をした女性だった。クールと言うよりは可愛らしい女性で、背は高めな色白の女性で、おそらく私と同世代ぐらいだろうか?シワもなく妙に若い。
その女性の手には真っ白なお皿が持たれている。
「こちら、お客様のご注文の品でございます」
そう言って、置かれたのは真っ白な器に入った見事なビーフシチューであった。
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