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暖かい。
まどろみの中から僕は目を開けつつ、足から体を覆うぬくもりを感じていた。あまりの快適さに僕は再びそのベッドの中に寝てしまいそうだった。すこし肩が外にはみ出てて冷たかったので、布団をかけ直すために僕は視界の外にあるそれを手探りで掴んだ。
さら、むにゅ。それは妙に柔らかく表面がもちもちしていた。うっすら産毛さえ感じられた。
ぼくは頭を起こしてそれを見た。
それは青ざめた肉塊であった。眼蓋のないしわしわの顔が虚ろな口を開けて僕に訴えかける。
「助けて…」
僕はうひゃあと悲鳴を上げて布団と思っていたものを蹴飛ばした。肉塊は扉付近まで吹っ飛び、形が崩れ「ううううやああああ!!」と叫んで動かなくなった。どうやら蹴飛ばされ激しい苦痛を感じて死んだ。否、ただ死んだのではない。僕が、殺した。
僕は立ち上がりどうしよう、どうしようとかんがえながら歩き回る。一体何が起きたと言うのか。そう思っているうちに、何かが僕の顔を覆いかぶさった。
「逃さない…」
「うわ!」
さっきの肉塊と同じ声。何も見えないが張る力からしてそれは天井にくっついているも思われる。僕は無我夢中でそれを激しく下に引っ張ると、ビリビリと裂ける音がした。「うううううう!!」肉塊は苦痛に呻きつつも僕の体を抱くように覆い続けた。
「なんで、なんで…」肉塊は喋りだした。「なんで私をこんなのにしたの…」
僕は息を呑んだ。そうだ、その声には聞き覚えがあった。「トミコ!!」
トミコは僕の彼女だった。彼女は大学時代の仲だったが就活に成功しすでに働いてる身だったのでなかなか会う機会がなかった。そこで、トミコがもうひとりいればいいな、と思った僕は、実験で作り出した 細胞を液体を彼女にかけた。それは細胞に突然変異を促し細胞分裂を促進するものだ。それがまかり間違えて、こんなことに。
「もうこうなってはあなたなしには生きられない」とみこは言った。「ひとつになりましょう。」
「え、トミコ、トミコ、トミコ!」
「ほら。」僕の右手が喋りだした。「わたし、あなたに感染しちゃった。」
「そんな…そんな…!!」僕は焦りながらも…心が恍惚に包まれていくのを感じた。あの愛しいとみこが僕の体に入ってくれるのだ。
「ひとつになりましょう。」
ひとつになりたい。
「トミコ、トミコぉ、トミコぉ……ぐふふぅ……」
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