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「あーー行きたくない!!!」
トミコはイライラしながら道をガツガツ歩く。
「よりによってアイツの家に忘れ物なんて!!携帯も繋がらないしどーなってんの。」
マンションの螺旋階段を登る。二の腕が壁を軽く摺るとトミコは「アツッ!!」と抑える。
「あーーあの時の傷…いきなり変な薬品ぶっかけて『とみこにあえないから増やす薬作った』とか気持ち悪い事言って、すっかり冷めて絶縁申し立てた、栄誉あるあたしの二の腕の傷!」
一人で自虐ネタする事ほど惨めな事もあるまい。とみこはため息をつきつつ、目的池の部屋についた。
「ケンジ?ケンジ?いるんでしょケンジ?」トミコはドアノブに手をかけた。「あ、鍵あいてる。入るよーケンジ!」
「トミコトミコトミコォ…」
トミコは立ち止まった。
「ケンジ…?」
「トミコォ…愛してるよ…いつまでも一緒だよ…」
その声はトミコに対して呼びかけてるようには聞こえない。恐る恐る部屋の中に入るトミコ。
足元に感触。息を呑んで見下げると、それはただの灰色の布団。
部屋の奥にはケンジがいた。なぜか引きちぎられたカーテンを被ってて姿が見えない。トミコは恐る恐る近づき、そしてカーテンをめくる。
「トミコォ…」
そこには、自分自身を抱きしめながら涙するケンジがいた。
「……。」トミコは呆然とケンジを眺めていた。彼は壊れてしまった。そういえば昔、言ってたな。
『ぼくは君のぬくもりが生きがいなんだ。』
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