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意気消沈して自室に戻ると、机に置いてあった携帯電話が点滅していた。
確認すると、メールがきていた。エレナからだ。
メールの内容は、今週の日曜、二人でどこか遊びに行かないかという、お誘いであった。
綾音はそれを見た瞬間、部屋でへんてこなステップを踏んだあと、こんなことをしている場合ではないと思いなおし、了承の旨を送った。
それに対して、エレナがメールの文字上でも非常に喜んでいるのが分かった。
綾音はベッドにダイブし、ごろごろと転がった。先ほどまでの暗い気分は、宇宙の果てに消え去ってしまったようだ。
ひとしきり夢想を楽しんだ後現実に帰還し、日曜日に着ていく服があったかどうか、いそいそとタンスの中を確認するのであった。
「綾音さーん! こっちこっち」
新宿駅南口前で、エレナは右手をあげて、自分の存在をアピールした。それに気づいた綾音は、ぺこぺこと頭を下げながら、小走りで近づいた。
「真白さん、ごめんなさい。南口にでたと思ったら西口で……」
「ふふ、あるあるよね」
エレナは上品に笑いながら、彼女を許した。綾音はあがった息を整えた後、エレナの服装をまじまじと見つめた。紺のロングスカートに、白のゆったりとしたお洒落なシャツ。また、肩から下げた高級感のある黒のバッグもポイントが高い。
それに比べ自分はどうだ。ジーパンに飾り気のない青のTシャツ。そして背負ったリュックサック。同じ女性とは思えない。
だが、エレナも同じように綾音の服装チェックをしているような目線を向けた後、にこやかに言った。
「綾音さんの私服、初めて見るけど新鮮でいいね」
「はは……。なんか子供っぽい恰好で恥ずかしいよ」
「そんなことないよ。ボーイッシュでいい感じよ」
――ああ、今まさに天使が降臨している。私はこれから、天使と共に時間を過ごすのだ。
終始にこにこしているエレナと、でれでれ顔の綾音は連れ立って映画館へ移動した。
二人が見た映画は、学園ラブコメ。冴えない地味な女子が主人公で、イケメン男子との恋愛を描く、という内容であった。
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