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そして開口一番、
「エレナさん、ごめんなさい!」
と頭を下げながら謝った。
数秒間頭を下げていたが、相手からの反応がないため、恐る恐る顔を上げた。エレナは困ったような表情で、小首をかしげていた。
「……えーっと、綾音さん。なんで謝ってるの?」
「え、あの、最近エレナさんが話しかけてくれなくなったし、私、避けられているようだったから……。なんか、気に障る様なこと言っちゃったんだろうなあと思って……」
それを聞いたエレナは、半分納得したように「ああ……」と答えた。そして、目を細めた。その顔は、すごく色ぽかった。
「綾音さん、それは誤解よ。私、自分で言うのもなんだけど、友達が多いほうでしょう? 最近は、あなた以外との人たちとたくさん付き合っていたから、そういう風に感じちゃったのかもしれないわね」
「で、でも! 私が話しかけようとしたら、明らかに避けてたじゃない!」
語調を強めて言う綾音に、エレナは困ったような目を向ける。やがて目線は虚空を彷徨い、何かを思案しているかのように見えた。そして、何か名案を思い付いたかのように、エレナは両手をぽんと合わせた。
「あぁ、じゃあ綾音さんも私たちのグループに入ればいいわ」
「え?」
綾音は、予想外の言葉に面食らった。私が、あのグループに? いやいや、馴染めるビジョンが描けない。でも――。
それでも、ここで頷かなければ、エレナとは疎遠になってしまうかもしれない。そう考えた彼女は、震える足に喝を入れ、一歩を踏み出そうとする。
「あの、わ、私なんかでいいなら、仲間にいれてください……」
エレナの目が光り輝いた。その光に、ごくわずかだが、蠱惑的なものが含まれていたことに、綾音は気づかなかった。気づけるはずがなかったのだ。
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